令和7年3月
先月の朝礼でこういう話をしました。「脳科学によれば、『やる気』は脳の中心付近にある側坐核で作られる。ただし、側坐核を活動させるには、ある程度の刺激が必要になる。つまり、毎日10分素振りをすると決めたなら、面倒だと思う日も、まずはバットを握って振ってみる。すると、しだいにやる気が生まれて、素振りに集中できるようになってくるのだ」と。
だから、とにかく行動してみることが大切です。その『形』をつくることが『心』のやる気を生み出すのです。
そこで今日は、浄土真宗の僧侶で教育者の東井義雄先生という方が書かれた『小さい勇気をこそ』という詩の一部を紹介したいと思います。東井先生は、記念館ができるほど、日本の教育に貢献をされた方です。
どんな苦難ものり切れる
大きい勇気もほしいにはほしいが
毎日 小出しにして使える
小さい勇気でいいから
それが わたしは
たくさん ほしい
発心を起こして、せっかく始めた努力なのに、自らやると決めた、できるはずのことなのに、「面倒くさい」とか、「ま、いいか」とか、「明日やればいいや」とか、その行動を妨げようとする言わば「悪魔のささやき」が心の中で聞こえてくることがあります。時間を決めていたのに「もう少しゲームをしてしまおう」とか、目覚ましが鳴ったのに「まだ寝ていよう」とか、悪魔は人の心に、幾度となくいろいろな形でささやきかけてきます。
しかし、その悪魔がたいした悪魔でないことは容易に想像できると思います。たいした悪魔でないならば、「小さな勇気」で十分に太刀打ちできるはずです。先月話したイチロー氏も、高校時代、1日10分の素振りを3年間毎日続けていく中で、たくさんの「小さい勇気」を使ったのではないかと思います。
東井先生は、『自分は自分の主人公』というタイトルの詩も書かれています。その冒頭には
自分は自分の主人公
世界でただ一人の自分を
光いっぱいの自分にしていく責任者
とあります。
発心を起こし、努力を始め、思いと行動の軸を定めていく。「小さい勇気」を小出しにしながらたくさん使って、小さいことをコツコツと積み上げていくことが当たり前にできる、とんでもないところへ続く道を一歩一歩前進していくことができる、そんな光いっぱいの自分へと自分で自分を育ててほしいと思います。
(「修了式」式辞より)